ムベ柄玄翁…これは、私にとって究極の玄翁です。

手にとって、卯木柄の玄翁ほどぴたっと吸い付いてはこない。
木肌はむしろ赤樫に近いし、堅木の木肌が持つ光沢感もありません。
頭の重さ、形、柄の意匠、ほぼ初代と同じです。
若干、柄の胴部分の断面が、楕円扁平率で15%ほど丸くなっています。
しかし、この玄翁が出来てからは、これ一辺倒になりました。
ごく無造作に使っていますので、ごらんの通りの状態です。
この素っ気ない玄翁なのに、なぜか?
使えば分かる、としか言いようがない!
言葉を失う、道具です。
じつは、この玄翁の柄は裏山で伐採してきたムベの蔓(ツル)で作ったものです。
ムベとは、アケビによく似た紫色の実をつける蔓性の木で、
アケビの実が熟すると割れるのに、ムベの実は割れません。
葉も肉厚で光沢があり、常緑樹(アケビは葉が落ちます)なので垣根に使われたり、盆栽でも人気があります。
このムベの根元の太い部分でほどよいカーブを持つところを切り出して
乾燥させておいたものを、加工しました。
蔓性(つるせい)ですので簡単にたわみますが
十分乾燥させるとかなり痩せて木肌が締まり、しっかりとしてきます。
この柄で、例の如くこだわりにこだわって玄翁をすえ、
いざ使ってみると!
たまらなく良い「しなり感」があり
振り下ろした力が玄翁の打撃面にスカーンと集中されるのを
…体で感じるのです。
しかも、衝撃をキックバックしてこないで、吸収してくれる。
玄翁を手に持って曲げてみると!
はっきりとしなるのが分かります。
すばらしい!---------のひと言しかありません。
世界でただ一つの、
究極の!しなる玄翁です。
エルゴノミクスはもちろん、絶妙のしなりをもつ玄翁…
使うたびに満足で、うれしい!
木工職人の道具道楽も、玄翁一つでこれだけ楽しめるところが
奥が深いですね。
自分の使うものは、世界でただ一つの「自分だけのもの」が欲しい。
一切の装飾性を省いた
機能美の極致だと思います。
匠の道具とは、かくあるべきかな…
たかが金槌、されど金槌です。





この修正加工によって
このような形の柄をもった玄翁を見るのは初めての方ばかりだと思います。